| “池袋中国語コラム”とは・・・ |
中国語学習者のための”池袋発”中国語学習に役立つコラムです。中国に関することだけでなく様々な話題を中国語を交えて紹介していきます。このカテゴリーでは、中国各地の地理や観光に関する情報・ノウハウを提供しています。
【内モンゴル、知られざる魅力】
最近、果てしない大草原での乗馬体験に加え、伝統的な移動式住居「ゲル」での宿泊や満天の星空観賞を目当てに、モンゴル国を訪れる日本人が増えています。しかし実は、短時間のフライトで似た体験ができる場所が、もう一つあります。中国の内モンゴル自治区です。
しかも中国へは、2026年12月末までの期限つきではありますが、日本人はビザなしで渡航できます。1回の入国につき30日まで滞在可能で、観光にも適用されます。
内モンゴルは中国の北部に位置し、広大な自然と豊かな民族文化で知られています。「モンゴル」と名がつくだけあって、草原・遊牧民・馬という共通のロマンを持ちながら、中国ならではのアクセスの良さと食文化の豊かさも兼ね備えている――それが内モンゴルの最大の魅力です。
旅の拠点はフフホト
内モンゴルの旅の拠点となるのは、自治区の首府・フフホト(呼和浩特 / Hūhéhàotè)です。歴史と現代が融合する都市で、フフホト最大かつ最古のチベット仏教寺院である大召寺(Dàzhàosì)には、高さ約2.5メートルの純銀の釈迦牟尼像が祀られています。ネパールの工匠が3万両もの純銀で鋳造したと伝えられ、この銀仏があることから、地元では「銀仏寺」の名でも親しまれています。
すぐそばの塞上老街(Sàishàng Lǎojiē)は、明・清時代の建築スタイルを残す約400年の歴史を持つ古い街並みで、民族特産品を売る商店が軒を連ねています。夜になると提灯に照らされ、昼とはまったく違う表情を見せてくれます。

草原、砂漠、そしてチンギス・ハーン
フフホトから少し足を伸ばせば、見渡す限りの緑の絨毯が広がるシラムレン草原(希拉穆仁草原 / Xīlāmùrén Cǎoyuán)で、乗馬体験や伝統的な移動式住居「ゲル(蒙古包 / měnggǔbāo)」での宿泊を楽しむことができます。
クブチ砂漠にある响沙湾(Xiǎngshāwān)は、砂漠というよりテーマパークのような趣で、ラクダ乗りや砂滑りなどのアクティビティが充実しています。

さらに南へ向かえば、オルドス草原にチンギス・ハーン陵(成吉思汗陵 / Chéngjísīhàn Líng)があります。ここは実際の埋葬地ではなく、遺品を祀る霊廟ですが、モンゴル帝国の創始者を記念する聖地として、今も重要な歴史的・文化的価値を持っています。

北部の満洲里やフルンボイル(呼倫貝爾)方面まで足を伸ばせば、より本格的な草原地帯に加え、白鳥の湖や白樺の樹林風景区といった景観も楽しめます。
内モンゴルの食
内モンゴル観光のもう一つの醍醐味が食です。広大な草原で育った羊を使った羊肉料理は、臭みが少なく柔らかいのが特徴です。
代表格は二つ。手づかみで豪快に食べる「手把肉(shǒubǎròu)」と、丸ごと一頭を焼き上げる「烤全羊(kǎo quán yáng)」です。どちらも内モンゴルならではのごちそうとして知られ、祝いの席や客人のもてなしに欠かせません。羊肉を煮込み、小麦粉の麺やジャガイモを加えた素朴な家庭料理も、体の芯から温まる味わいで人気があります。

意外に思われるかもしれませんが、シュウマイ(烧卖 / shāomài)はフフホトのご当地グルメとしても知られ、観光ツアーの昼食に組み込まれることも多い一品です。

馬奶酒(mǎnǎijiǔ)は、馬の乳を発酵させて作る内モンゴルの伝統的なお酒です。アルコール度数は低めで、ほのかな酸味とミルクの風味が特徴です。遊牧民の間で古くから飲まれてきた飲み物で、来客をもてなす際にも振る舞われる、内モンゴルの文化を象徴するお酒の一つです。
遊牧文化にどっぷり浸る
内モンゴルでは、遊牧文化を体で味わう体験も大きな魅力です。草原のゲルに宿泊すれば、遊牧民さながらの一夜を過ごすことができ、乗馬体験では雄大な草原を駆け抜ける爽快感を味わえます。

夏に訪れれば、競馬・モンゴル相撲・弓を競う伝統の祭典「ナーダム祭(那达慕大会 / Nàdámù Dàhuì)」に出会えることもあります。砂漠地帯ではバギーや砂滑りなどのアクティビティも充実しており、家族旅行にも向いています。

草原の音色、馬頭琴
馬頭琴(马头琴 / mǎtóuqín)は、モンゴル族を代表する伝統的な弦楽器です。竿の先端に馬の頭の彫刻が施されていることから、その名がつきました。2本の弦を弓でこすって演奏し、草原の風景や遊牧民の暮らしを思わせる、哀愁を帯びた深みのある音色が特徴です。
馬頭琴の伝統音楽は、モンゴル国が申請したものが2003年にユネスコの傑作宣言を受け、2008年に無形文化遺産の代表一覧表に記載されました。中国でも「モンゴル族馬頭琴音楽」が国家級無形文化遺産に指定されており、国境を越えて受け継がれてきた文化であることが分かります。内モンゴルの観光地では、実際の演奏を聴いたり体験したりできる機会もあります。

おわりに
内モンゴルの食・遊び・文化を振り返ってみると、そのすべてが草原の遊牧文化に根ざしていることに気づかされます。湯気の立つ手把肉、手に汗握るナーダム祭のモンゴル相撲、そして哀愁を帯びた馬頭琴――そのどれもが、この大地に代々受け継がれてきた暮らしと精神を物語っています。
近くて遠い隣国・中国にありながら、日本ではまだあまり知られていない内モンゴル。都会の喧騒を離れ、雄大な自然と異文化にどっぷり浸りたいと願う方にとって、ここはきっと忘れられない旅先になるはずです。次の旅行先に迷ったら、ぜひ内モンゴルを選択肢に加えてみてください。