“池袋中国語コラム”とは・・・ |
中国語学習者のための”池袋発”中国語学習に役立つコラムです。中国に関することだけでなく様々な話題を中国語を交えて紹介していきます。このカテゴリーでは、中国語学習者にお勧めの中国映画をご紹介します。映画を見ることで中国に対する歴史や文化などの理解が深まるとともに日常的に使える中国語表現をたくさん学ぶことができます。気になる映画はぜひチェックしてみてください。
中国についてよく分かる傑作映画10選
社会問題・都市と地方・生活様式の違い
今回は主に、文化大革命以降の歴史、社会問題、現代中国の生活様式や食文化の違いに関する映画をご紹介いたします。急速に発展を遂げた現代の中国を知る上で、文化大革命以降の歴史は非常に重要です。
また社会問題では、現代において非常に身近で複雑なテーマを扱った映画をご紹介させていただきます。時には目を覆いたくなるような場面もございますが、ぜひ最後までご覧下さい。
【亲爱的:2014年】(Qīn’ài de)
2014年製作/130分/G/中国・香港合作
邦題:最愛の子
チャイニーズアメリカン映画祭(第10回) 最優秀女優賞
中国映画監督協会賞(第6回)特別審査員賞
金鶏奨(第30回)最優秀助演男優賞
チャイニーズ・シネフィリアアワード(第4回)最優秀女優賞
北京大学学生映画祭(第22回)最優秀作品賞、最優秀女優賞
香港電影評論学会大奨 推薦映画(第21回):最優秀女優賞、最優秀脚本賞
ゴールデン・フェニックス・アワード(2015年)最優秀主演男優賞
香港電影金像奨(第34回)最優秀主演女優賞
東京フィルメックス(第16回)観客賞 等
監督:陈可辛(Chénkěxīn)
主演:赵薇(Zhàowēi)、黄渤(Huáng bó)、郝蕾(Hǎolěi)、朱东旭(Zhūdōngxù)、周品睿(Zhōupǐnruì)
この物語は実際に起こった事件を基に作られています。
中国では年間20万人の子どもが行方不明になっています。
中国で1年間に立件される子どもや女性の誘拐事件は約2万件で、1日平均50件です。
「人贩子(Rénfànzi)」という、子どもをさらって売り飛ばす誘拐犯を指す言葉がある程、中国では児童誘拐や人身売買が身近な問題です。
このように中国で誘拐が多発する背景には社会保障制度の未成熟と、一人っ子政策の影響があります。
民間研究機関の調べによると、内陸部の農村住民が受け取る年金は月120元程度で、都市部会社員の約20分の1しかないようです。
貧しい地域ではさらに半額の月約60元程度で、医療保険なども不十分だそうです。
そうした農家が、一人っ子政策の影響もあり、後継ぎに恵まれなかった場合、やむを得ず、老後の暮らしを支える働き手として子どもを買い求めるのだそうです。
この映画では深圳で誘拐された3歳児、田鹏(Tián péng)が誘拐され、3年後に農村で発見される物語です。
田鹏は誘拐犯の妻、李红琴(Lǐhóngqín)を母として慕っており、実母のことを覚えていません。
同じ場所で暮らしていた妹も実子ではないとされ、養護施設に送られます。
しかし子どもにとっては、たとえ実母ではないとしても红琴のことが忘れられません。
それは红琴にとっても同じことでした。
児童売買の罪深さ、さらには被害者の弱みに付け込んだ詐欺行為の卑劣さなど、被害者の家族たちの苦悩から、この問題の悲惨さに胸が打たれます。
ただしこの映画はそれだけではありません。
加害者とされる誘拐犯の妻でもあり、子どもたちの親でもあった红琴のやるせない思いも描かれています。
誘拐された子どもだということを知らなかった红琴の立場からしてみれば、ある日突然子どもを奪われてしまった悲劇でもあるのです。
この映画は、まさに中国の根深い社会問題について雄弁に語ってくれています。
監督、陈可辛は、中国・香港・台湾のアカデミー賞と呼ばれる3つの映画賞において最優秀監督賞を受賞した唯一の映画監督です。
また香港の映画監督としては初めて中華文化の発展に貢献した人物に贈られる名誉賞「中華文化人物」(2014年)を授与されたほか、釜山国際映画祭(2014年)にて、アジアを代表する監督・俳優に贈られるアジアスターアワード特別賞を受賞するほど、中国だけでなく世界的に有名な映画監督です。
『亲爱的』予告編