“池袋中国語コラム”とは・・・ |
中国語学習者のための”池袋発”中国語学習に役立つコラムです。中国に関することだけでなく様々な話題を中国語を交えて紹介していきます。このカテゴリーでは、中国語学習者にお勧めの中国映画をご紹介します。映画を見ることで中国に対する歴史や文化などの理解が深まるとともに日常的に使える中国語表現をたくさん学ぶことができます。気になる映画はぜひチェックしてみてください。
中国についてよく分かる傑作映画10選
社会問題・都市と地方・生活様式の違い
今回は主に、文化大革命以降の歴史、社会問題、現代中国の生活様式や食文化の違いに関する映画をご紹介いたします。急速に発展を遂げた現代の中国を知る上で、文化大革命以降の歴史は非常に重要です。
また社会問題では、現代において非常に身近で複雑なテーマを扱った映画をご紹介させていただきます。時には目を覆いたくなるような場面もございますが、ぜひ最後までご覧下さい。
【团圆 Apart Together:2010年】(Tuányuán)
2010年製作/97分/中国
邦題:再会の食卓
ベルリン国際映画祭(2010)銀熊賞(最優秀脚本賞)
監督:王全安(Wángquán’ān)
主演:由卢燕(Yóu lú yàn)、凌峰(Líng fēng)、徐才根(Xúcáigēn)
中国と台湾の関係、食文化、上海、立ち退き問題、婚姻制度について、よく分かる作品です。
「中国と台湾の分断」というテーマで、生き別れた夫と妻との再会を描いています。
1949年、国民党が台湾に撤退して以来、長い間中国と台湾は分断されました。
そして多くの国民党兵士の家族が本土に取り残され、数十万世帯が生き別れになりました。
この物語は、そうして生き別れてしまった家族の再会を描いています。
1987年、規制が緩和され、台湾当局は退役軍人の本土帰省を許可しました。
この映画では、台湾老兵帰郷団として帰省した台湾老兵と、上海に住む妻との実話を元にしています。
監督自ら3か月間、ある家族を取材したそうです。
台湾に渡った夫、刘燕生(Liúyànshēng)と、上海に残った妻、乔玉娥(Qiáoyù’é)との会話は、まさに生き別れてしまった夫婦の軌跡です。
「逃亡すれば銃殺、泳いで本土に戻ろうと大勢の人が海に飛び込んだが、誰も戻ってこなかった」、そう語る燕生に、玉娥は「文化大革命という時代を、子どもを抱えた国民党軍兵の妻が生き延びられただけで幸福」と自身のことについても話し始めます。
話しているうちに一途にお互い想い続け、今でも両想いでいることが分かります。
しかし例えかつて二人が夫婦だったとしても、そしてどんなにお互い二人で一緒に暮らすことを望んだとしても、もはやそれは二人だけの問題ではなくなってしまいました。
大反対する子どもと、一緒に苦労をともにした夫を残して、自分の気持ちをただ優先させることはできません。
結局、踏み切れずに選択した玉娥のその後は、まさに今の中国の家族の問題を象徴しています。
この映画では「食卓」も重要なテーマとなっています。
この作品では家族が食卓を囲んで一緒に食事をするシーンが何度も出てきます。
この食卓のシーンで、最初は穏やかに話していても、一緒に食事をしていくうちに、徐々にお互い激しい感情を見せていきます。
これは中国でも東北人特有の感情表現で、会話や食事を何度も重ねていくことで感情が表しやすくなるのだそうです。
このように食卓の場面から、感情表現の表し方や特徴なども見ることができます。
また中国では日本以上に一家全員で食卓を囲むことを大事にしています。
それにも関わらず最初は賑やかだった食卓も映画が進むにつれて、閑散としていきます。
この食卓の場面から、親子関係の変化や家族の在り方について考えさせられます。
また食卓には、あらゆる家庭料理が並べられています。
お客さんを歓迎するために出す蟹やお酒等、上海の食文化についても学ぶことができます。
この映画では、他にも上海の街並みがよく分かります。
現代の中国を象徴する街でもある上海。
世界でも類をみない程の速さで発展していく大都市でありながら、古い街並みも依然として残っています。
また貧富の差も極端で、驚くほど裕福な人もいれば、助けが必要な人もいます。
そんな上海のリアルも作品から感じることができます。
映画で取り上げられた家族が住んでいる場所は、上海の中でも古い建物が多くひしめき合った路地にあります。
立ち退きを命じられ、じきに新しく建てられている高層ビルに引っ越す予定です。
そんな開発が進む上海の今を象徴したような場面があらゆる場面で取り上げられています。
『团圆 Apart Together』予告編