初夏の養生ハーブティー~生姜大棗茶

 

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中国語学習者のための”池袋発”中国語学習に役立つコラムです。中国に関することだけでなく様々な話題を中国語を交えて紹介していきます。このカテゴリーでは、中国の文化を紹介しています。語学を勉強するにはその国の文化を理解することも必須です。中国文化を知ってより中国語を楽しみましょう!

【初夏の養生ハーブティー~生姜大棗茶】

中医学では「春夏养阳,秋冬养阴[chūn xià yǎng yáng qiū dōng yǎng yīn]」(春夏に体の「陽」を養い、秋冬に体の「陰」を養う)*(出典:『黄帝内経・素問・四気調神大論篇』)という基本的な考え方があります。
そこから、「冬吃萝卜夏吃姜[dōng chī luó bo xià chī jiāng](冬は大根を食べて、夏は生姜を食べる。)」という食習慣が生じました。理由は、大根は体の「陰」を補う効果があって、生姜は体の「陽」を補う効果があるからです。

中医学の陰陽理論に詳しい方は「春生夏长,秋收冬藏」と「圣人春夏养阳,使少阳之气生,太阳之气长;秋冬养阴,使太阴之气收,少阴之气藏。是谓春夏养阳,以养阳之生长;秋冬养阴,以养阴之收藏」(高世栻による注釈)を参考にしましょう。

さらに「冬病夏治,夏病冬治[dōng bìng xià zhì xià bìng dōng zhì ]」(冬に発症しやすい病気は夏から治療しましょう。夏に発症しやすい病気は冬から治療しましょう)という素朴な治療の考え方が誕生しました。この考え方から、古代医家の予防思想が見られます。
正常な人体の生理学的働き方と仕組みは気候・天気・温度の変化に応じて規則的に変わっていき、春夏の季節になると体の「陽」が「陰」より育みやすく、秋冬の季節になると体の「陰」が「陽」より育みやすいという考え方が背景です。
つまり、人体の正常な規則としても、冬には「陽」が「陰」に負けて冷え性などの症状と病気が発症しやすいと考えられます。冬の季節はどうしても「陽」が育みにくいので、その前の春と夏で、適度に体の「陽」の育みを助けて、「陽を補う」生薬とか食材を使って、早めに冷え性対策をしましょう。

この初夏の季節に、健常者の養生にもふさわしい「生姜大棗茶」をご紹介します。
漢方薬に詳しい方は、生姜と大棗に馴染みがあると思います。市販の漢方薬の成分表を見ると、「生姜」(東洋医学の読み方はショウガではなく、ショウキョウですが、薬味食材の生姜とはまったく同じものです)と「大棗」(読み方:タイソウ。新鮮な果物のナツメではなく、ナツメの成熟した果実を乾燥させたもので、お粥、養生火鍋、中華まん、養生スープなどでよく使う食材です)がよく見つかります。

現在日本で使われている漢方薬の処方・組立ては、ほとんど張仲景の著作『傷寒論』と『金匱要略』からきたものです。仲景は、「生姜」と「大棗」の組み合わせは「调和营卫,调和脾胃[tiáo hé yíng wèi tiáo hé pí wèi]」(栄と衛の機能のバランスと脾と胃の機能のバランスを調和する。)の効果があると言っています。「衛」は体の表、つまり表層、外部に働く「気」の一種、「栄」体の裏、つまり深層、内部に働く「気」の一種である。昼間、人が起きている時は、「衛」気が体の深層、血管レベルから表層、皮膚レベルに出て、「陽」の一種として働きます。「栄」気はずっと体の深層で「陰」の機能を果たします。夜になったら、「衛」気はまた表層から深層に戻って「栄」気と合流します。「衛」と「栄」がバランスと調和を失うと、汗が出やすい、寝つきが悪い、寒がり暑がりなど、いろんな症状が出ます。「脾」と「胃」の関係は、「臓と腑」、「裏と表」の関係で考えてよい。「脾」は西洋医学の脾臓と膵臓に相当する。「胃」は大体西洋医学の胃と一緒です。「脾」と「胃」は一緒には働くものですが、性格が正反対です。「胃」は湿気が好きで乾燥が嫌いなのに対して、「脾」は乾燥が好きで湿気が嫌いです。それで食事のバランスがある程度崩れたら、「脾」と「胃」はすぐ仲間割れになってしまいます。中国の流行語では「友谊的小船说翻就翻[yǒu y de xiǎo chuán shuō fān jiù fān ]」という状況です。

 

すなわち、少しでも体調が悪くなったら、「栄と衛」「脾と胃」のバランス失調を失いやすい状態に陥ります。この時、「生姜」と「大棗」のコンビは体の機能回復に役立つと思われます。
生姜大棗茶の作り方はとても簡単で、適量のお湯を沸かしてから新鮮な生姜のスライスと数個の大棗を入れて、ちょっとだけ煮ればいいので、中国の養生ファンたちに大人気です。
ただし、生姜と大棗の割合について、ネット上のみんなが書いたレシピを見てみると、色んな作り方があるようです。新鮮な生姜ではなく、ジンジャーパウダーを使う人もいるようです。
仲景の著書『傷寒論』に記載された「桂枝湯」では、「生姜(切)三两,大枣(擘)十二枚」(切は切る、擘は割るという意味)と書かれています。二千年ぐらい前の計量単位は現在とは若干違うので、今の臨床で桂枝湯を作る際、生姜と大棗を同じ質量(計量単位はg)で煎じ薬に入れます。薬として、決まっている量を飲む場合、この割合に従えばよいと考えます。

しかし、薬ではなく、養生のためのハーブティーとして飲むなら、もっと細かくて厳しいルールがあります。中医学では、生姜は「辛温」(文字通り、辛い、温かいと考えるとよい)の特質があるので、体の陽気、衛気の発揮に役立つと思われます。陽気、衛気の発揮は起きている時が望ましいです。特に朝の時にうまく発揮するとよいと思われます。逆に、夜になると、人は睡眠状態になり、陽気や衛気に体の内部に行って昼間より穏やかになってほしいです。この時、生姜を多めに飲んだら良くないですね。ちなみに、中国語には「早上吃姜如参汤,夜里吃姜如砒霜」(生姜は朝の時に食べると高麗人参のような体に良い効果がありますが、夜中の時に食べると人体に対する効果はヒ素と同様)という言い方もあります。したがって、養生ハーブティーの「生姜大棗茶」を作るなら、朝と午前中は生姜:大棗=3:1の質量比で作って飲んだほうが望ましいです。アフタヌーンティーにするなら、生姜:大棗=1.5~2:1の質量比が良いです。どうしても夜にも飲みたいなら、1:1で十分です。
我々現代人は夏の季節に冷房を使うことができますが、冷房で体中に「寒邪、湿邪」(中医学では過度な寒さと湿気は邪気だとみて、体の陽気の発揮を妨げると思われます)が溜まりやすくなります。そして、夏は「脾」と「胃」のバランスが崩れやすい季節でもあります。よろしければ、「生姜大棗茶」を飲んで、夏バテや冷房の寒さと闘っている体を守りましょう。

 

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