“池袋中国語コラム”とは・・・ |
中国語学習者のための”池袋発”中国語学習に役立つコラムです。中国に関することだけでなく様々な話題を中国語を交えて紹介していきます。このカテゴリーでは、中国赴任や出張などビジネス向けの方にお勧めの情報・ノウハウを提供しています。
【世界工厂:東莞】
東莞(dōng guǎn )は地理的に非常に恵まれた場所です。広州、深圳、香港の中間に位置しているため産業が発展しやすく中国最大の工場群があります。これらの中国朱江河口の主要都市である広州、香港、深圳、東莞、マカオを結ぶ三角地帯を中心とする地域を朱江デルタと呼んでいます。産業の発達に伴い数多くの出稼ぎ労働者が職を求めて集まっています。東莞の人口が約840万人であるのに対し、省外からの流入人口が415万人以上となっていて中国国内のあらゆる場所から来た人がここ東莞に集まっているのも特徴です。
豆知識:朱江デルタは産業が発達しているため多くの出稼ぎ労働者が職をもとめて移住していて域内人口は7000万に達するといわれています。
こうした特徴について知ると「東莞に観光で行っても楽しくないのでは?」と思うかもしれませんが、実はそうでもないのです。この東莞はなんと国連環境署公認の“国際ガーデン都市”で千平方キロメートルにも達する生体保護区があります。森林カバー率も37%に達するほどで先ほど紹介した産業の発達とは裏腹に環境面でもしっかりと管理、保護された都市なのです。そして、私たち人類が決して忘れてはならない大事な教訓について語っている都市でもあるのです。
東莞について知っておくべきこと
東莞市には虎門鎮(hǔ mén zhèn)という場所がありますが、この場所はかつて清国と大英帝国が戦争をした舞台です。日本の歴史の授業でもアヘン戦争について学びますが、ここはアヘン戦争にちなんだ観光スポットがいくつかあり、中国国内の旅行者でもここを目当てに東莞に旅行する人もいます。アヘン戦争のきっかけになった出来事は林則徐が当時中国に流入していたアヘンを押収して虎門にある人工池でアヘンと石炭を一緒に投入して化学反応を発生させて処分したことにありますが、これらの出来事がここ東莞でおきました。それで1840年に起きたアヘン戦争から180年が経過した今でも薬物がもたらした悲劇を忘れないためにここ虎門には多くの博物館、記念館があります。
鸦片戦争博物館(yā piàn zhàn zhēng bó wù guǎn)
ここでは戦争のきっかけとなったアヘンについて紹介されています。前述したとおりアヘンは人工池に廃棄されましたが、この時に廃棄されたアヘンはなんと1500トンもの膨大な量に達したといわれています。石炭と化学反応させたときの様子が絵に描かれており、当時の様子を垣間見ることができます。
海戦博物館(hǎi zhàn bó wù guǎn)
アヘン戦争の舞台となった虎門大橋をここで見学することができます。ここでは実際にアヘン戦争で用いられた威遠炮台の跡が残されています。戦争時にどのような戦術が用いられ、どのように進展していったかが当時の資料と絵で説明されています。ここは戦争に関する博物館ですから、当然無邪気に楽しむような雰囲気の場所ではありません。しかし私たち人類が決してかかわってはいけないもの、薬物がもたらす悲劇について来館者に強烈なメッセージを残しています。
プチ情報:ここでは薬物に手を出してしまったスターに関する記事が大きく貼りだされています。中には中国で人気のある日本の有名人に関する記事が出ていたりします。
横档島 (héng dǎng dǎo)
この島にも砲台の跡地があり、観光することができます。虎門大橋の下に位置していて普通に歩いて一周することができる小さな島です。島から眺める海の景色もまた格別です。夏には浜辺で海水浴を楽しんでいる人たちもいます。島への入場料も20元くらいと大変手ごろなので博物館へ来たら是非ついでに立ち寄ってみてください。威遠炮台附近にモーターボード乗り場があり、そこから横档島へ行くことができます。本来なら移動手段としてのモーターボードなのですが、大型船の合間を縫うようにして全速力で走るためかなりエキサイティングです!!波でボートが浮き上がることもありますのでしっかりロープを掴んでおくようにしましょう。当たり前のように海水をかぶりますので濡れてもいいようにスマホなどの電子機器は防水できるように準備をしておき、着替えも用意しておきましょう。
アヘン戦争は現在の中国史、近代世界史を理解するうえでも非常に大切な出来事です。そういった意味で非常に価値のある場所ですから東莞を訪れた際には立ち寄ってみてください。
外国人居住区(wài guó rén jū zhù qū)
東莞はとても産業が発達していて外から多くの人が働きに来るということはすでに紹介しましたが、中国国内のみならず国外からも多くの人が仕事のために来ています。東城区には韓国人居住区があり道行く看板はすべて韓国語で表記されています。ここで韓国焼肉を堪能することもできます。そして東城風情歩行街には日本料理店も数多く見受けられます。日本食が恋しくなってしまったらここへきてもよいかもしれません。そしてこの東城区には欧米人居住区もあります。まさに千差万別です!いろいろな人が集まっているのが東莞の魅力の一つですのでこの東城区の外国人居留区にも足を運んでみてください。様々な国の異国情緒を楽しむことができます。
東莞可園(dōng guǎn kě yuán)
東莞には170年前に造られた庭園があります。それが可園(kě yuán)です。この場所は2001年には中国国務院によって全国重点文物保護単位に指定されました。実は広東省では明朝や清朝の時代に庭園造りが盛んで、多くの庭園が造られました。それらを総称して“嶺南園林”と呼ばれています。残念なことに時の流れの中で当時の庭園はほとんど姿を消してしまいました。そんな中、この可園(kě yuán)はその当時の貴重な庭園を見事に保存しています。
この可園(kě yuán)の設計においては非常に高度な技術が用いられていて小さい空間を大きく感じさせる技法が用いられています。“咫尺山林(zhǐ chǐ shān lín)”と呼ばれる技法なのですが、池、道、建物をバランスよく配置して限られた空間を最大限に利用することで大自然を表現しています。興味深いのがあの有名な三国志に出てくる戦術の“八卦の陣や”孫子の兵法にある“四方発達”の理念をなんと庭園設計に取り組んでいるところです。
世界的に見て日本人の家屋はとても狭いといわれています。私たち日本人はそんな中で快適に生活するためにスペースを上手に活用していかなければなりません。この庭園で用いられている技法は私たち日本人の生活に必要不可欠なヒントを与えてくれるでしょう。
豆知識:広東省には四大名園と呼ばれるものがあります。佛山の「梁園」(liáng yuan )、順徳の「清暉園」(qīng huī yuán)と番禺の「余萌園」(yú meng yuán) が挙げられますが、この可園もその中に名を連ねています。
もともと東莞は観光客が多い場所ではありませんが、そんな東莞においてさらなる静寂を醸し出しているこの可園には足を運ぶ価値が十分にあります。
旗峰公園(qí fēng gōng yuán)
この公園は黄旗山を囲むようにして作られた公園です。頂上まで行くと、展望台があり東莞の市内を一望することができます。30分くらいで頂上へ行くことができます。公園正面入口には湖があってボートに乗ることもできます。普段から近所の人が家族を連れて遊びに来ていたりしているので、中国の人たちの日常を垣間見ることができる場所です。
松山湖公園(sōng shān hú gōng yuán)
松山湖畔にある公園です。この松山湖は産業の発達している東莞においてもとりわけハイテク産業の中心地となっていて、中でも中国を代表する企業ファーウェイの研究開発基地があります。そんな中国経済を支える重要な場所にあるこの公園ですが、湖の周りをサイクリングして景色を楽しむことができるようになっています。地元の人が頻繁に訪れていて釣りをしていたりします。
下坝坊(xià bà fǎng)
少数民族である嶺南民族の風習が色濃く残っている地区です。建造物のデザインが中国のそれとも大きく異なっていて独特の雰囲気を醸し出している街です。天気のいい日は異民族文化を心行くまで堪能することができます。ほとんどのお店がバーやホテル、飲食店となっていて若い人たちが多く訪れます。
~グルメ~
ここからは東莞のグルメについて紹介していきます。広州などのグルメはすでに日本の多くの方に知られていますが、「東莞にグルメはあるの?」と思われるかもしれません。どうぞご安心ください!ちゃんと東莞ならではのグルメがあります。
冼沙鱼丸(xiǎn shā yú wán)
東莞と言えば、魚の身をすりおろして丸い形にしたフィッシュボールで有名です。東莞では“石鯉”という魚がよく取れるためその石鯉で作ったフィッシュボールが名物となっています。中でも高埗镇冼沙村という人口7000人ほどしかいない小さな村で捕獲した新鮮な石鯉を用いて作られたフィッシュボールは中国国内でも絶品と賞賛されています。
冼沙鱼丸が食べられる店:
冼沙鱼丸(旗峰路与东城西路交叉口东侧万科城市广场B1层)
鴨脚包(yā jiǎo bāo)
この料理も東莞独特の料理として知られています。特殊に調合したソースにアヒルの脚を漬け込んでおき、最後にアヒルの腸で脚をぐるぐる巻きにしたものです。歯ごたえがプリプリしていて、かんだ瞬間にゆっくりと油が染み出てきます。見た目が完全にアヒルの脚なので見かけで拒否反応を示してしまう方もいると思いますが、「私は全然気にしないけど」という強者のあなたにはおススメの一品です。
鴨脚包が食べられる店:
三正半山酒店餐厅(樟木头店) (石新路22号三正半山酒店)
烧鹅濑粉(shāo é lài fěn)
濑粉とは米で作った麺のことを意味します。東莞では伝統的にこの麺にアヒルの肉をのせて食べています。特にお祝い事があるときに食べるという習慣があるようです。中国では北京ダックに代表されるようにアヒルの肉がよく食されています。ぜひ試してみてください。
烧鹅濑粉が食べられる店:
艳华饮食店 (莞城街道岗贝市场从村正路3号合家欢超市旁34号)
鱼包(yú bāo)
これもやはり東莞で捕れる石鯉を用いた料理です。先ほど紹介した冼沙鱼丸とは異なり、石鯉をすりつぶして皮を作り、その皮で豚肉、トウガンなどを包んでゆでてから食べるというものです。これも東莞ならではのグルメです。
鱼包が食べられる店:
海龙渔村(万江石美东悦酒店东30米 )
時間がない時はフードコートを活用してもよし
東莞のグルメをたくさん紹介しましたが、中国では“○○美食広場”と呼ばれる場所が多くあります。いわゆるフードコートのようなものですが、いろいろグルメが集まっている場所なので手軽に東莞の美味しいものを食べることができます。この場所は中国人観光客もよくいくような場所なのでぜひ行ってみてください。もちろんお金に余裕があれば高級レストランで東莞のグルメを味わえます。
金河畔美食广场:住所:运河东路113号
最後に
東莞について紹介しましたが、いかがだったでしょうか?東莞は産業が発達している場所というイメージが強いのであまり観光地としてのイメージがないかもしれません。しかし実際には私たちにとても大切な教訓を教えてくれる貴重な場所ですし、歴史もしっかり保存されています。広東省のへ足を運ぶ際にはぜひ東莞もリストに加えてみましょう。