効果的な中国語研修のために|企画から成果の確認までに決める8つのこと

「社内で中国語研修をやることになったのですが、何から決めればいいのか分からなくて」

法人のお客様から最初にいただくご相談は、たいていこの形をしています。研修の必要性は社内で決まった。ただ、目標をどう置くのか、どの形式でやるのか、いくらかかるのか、そもそも何をもって成功と言うのか。決めることが多すぎて、最初の一歩が出ない。

この記事は、その最初の一歩のための整理です。研修を企画してから成果を確認するまでに決めることを、順番に並べました。細かい部分は個別の記事にまとめてありますので、必要なところだけ読み進めていただければと思います。

研修の計画について打ち合わせをする人事担当者
決めることの多さで止まってしまう、という声をよくうかがう

1|研修の目的を、参加者と共有する

ご相談の入口としていちばん多いのが、次のようなご要望です。

  • 中国拠点や取引先とのやり取りに、業務で直接使う中国語を身につけさせたい
  • 赴任予定者に、現地で生活できるだけの中国語を持たせたい
  • HSKや中国語検定の合格を、社内外に示せる指標にしたい
  • 中国語圏のお客様への接客レベルを、全体的に底上げしたい
  • 全国の拠点で、レベルの異なる社員に同時に研修をしたい

言葉を伝えるだけであれば、通訳を頼むほうが早く確実です。それでも社員に学ばせる意味があるとすれば、言葉と一緒に、考え方や商習慣の違いまで理解できることだと思います。中国では個人と個人の関係が重く見られるので、「中国語を話そうとする日本人」というだけで、相手の受け止め方が変わる場面もあります。

ここで一つ、抜けやすい工程があります。その目的を、受講する本人に伝えることです。人事のご担当者の頭のなかには目的があっても、選ばれた社員には伝わっていないことが少なくありません。通常業務を抱えたまま知らない言語を学ぶことになるので、なぜ自分なのかが分からないままだと、どうしても優先順位が下がります。初回レッスンの前に15分でも説明の場があると、その後の出席率が変わります。

研修がうまくいかない原因は、この種の「始める前」に集中しています。よくある6つの失敗と防ぎ方に、実際に見てきたつまずきをまとめました。

2|到達目標を、学習時間で見積もる

目的が決まったら、次はどこまで到達させるかです。ここで英語研修の感覚を持ち込むと、ほぼ確実にずれます。

英語は義務教育で6年以上やってきているので、苦手な方にも土台があります。一方、中国語は受講者のほぼ全員が完全な初学者です。アルファベットにあたるピンインの読み方から始まります。同じ予算、同じ期間で組めるものではありません。

目安になる数字を挙げます。まったくの初学者が日常会話レベル、HSK3級相当に届くまでの学習時間は150時間程度です。週1回1時間の通学なら、単純計算で約3年かかります。通訳なしで商談できるレベル、HSK6級で8割程度の得点を狙うとなると800時間以上。週1回1時間では15年以上かかる計算です。

HSK6級は、合格することと、8割を安定して取れることの間に大きな差があります。目標を置くときは、級だけでなくどの程度の得点を目指すのかまで決めておくと、必要な時間を見誤りません。

この数字は、社内で目標を決めるときにこそ役に立ちます。「半年で日常会話ができるように」という目標は、置いた時点で達成できないことが決まってしまいます。半年でできるのは、発音の土台を作り、決まった場面のやり取りを身につけるところまで。それでも十分に意味のある到達点ですが、書き方を間違えると「達成できなかった研修」になります。

イーチャイナの中国語学習レベル表(16段階/語彙数・検定相当レベル・学習時間の目安)
イーチャイナの学習レベル表。16段階それぞれに語彙数、検定の相当レベル、学習時間の目安を置いています

漢字が読めることの、強みと落とし穴

日本人にとって中国語は、語彙の習得が非常に速い言語です。中国の常用漢字が約2,500字、日本の常用漢字が2,136字で、形も意味も重なるものが数多くあります。「目」から学習を始められるので、読む・書くの習得が早い。

ただ、これは落とし穴でもあります。上級の試験に合格しているのに話せない、という方は少なくありません。読解中心の学習に偏り、語学のいちばんの目的である話す・聞くを後回しにした結果です。

非漢字圏の学習者は逆で、耳から覚えるので話す・聞くが先に伸びます。日本人が中国語を学ぶときは、意識して口を動かす時間を確保しないと、この順序が崩れます。私たちがレッスンで聞く3割、話す7割を目安にしているのは、そのためです。

3|研修期間と頻度を決める

到達目標と現在地が決まれば、必要な期間は計算できます。1年で日常会話レベルなら、150時間 ÷ 50週で週3時間程度。これを社内のスケジュールに落とせるかどうかが、次の判断になります。

ここで、人事のご担当者と受講者の間に認識のずれがあると、あとで困ることになります。

ある大手ホテルで、中国からのお客様が増えたので対応できるスタッフを増やしたい、というご相談がありました。初学者の方々に週1回1時間のグループ研修を1年間。簡単な挨拶とご案内ができるようになったところで、教育担当の方はスタッフに積極的に声をかけるよう促します。ところが中国語で話しかけられたお客様は「このスタッフは中国語ができる」と受け取り、早口で話し返してくる。スタッフはほとんど聞き取れず、かえって中国語で声をかけるのが怖くなってしまいました。

研修そのものは計画どおりに進んでいます。ずれていたのは、担当者が期待していた到達点と、実際に届く到達点でした。1年でどこまで行けるのかを最初に共有しておけば、避けられた話だと思います。

4|受講形態を選ぶ

形式によって、費用も効果も管理のしやすさも変わります。それぞれの向き不向きを整理します。

形態 向いている点 注意が必要な点
講師派遣 移動時間がかからず、慣れた環境で受講できる。人数が集まるほど1人あたりの費用が下がる 1レッスンの単価は割高。場所・時間・レベル・カリキュラムを揃える必要がある
マンツーマン(通学) 学習効果が最も高い。内容もレベルも受講者に合わせられる 費用が割高。移動の時間がかかる
グループ(通学) 人数が集まればコストを抑えられる。学習仲間がいて続けやすい 場所・時間・レベルを揃える必要がある
オンライン
マンツーマン
効果が高く、移動が不要。受講場所を選ばない 受講状況が担当者から見えにくい
オンライン
グループ
移動が不要で、人数が集まればコストを抑えられる レベルを揃える必要がある。通信環境と初期設定が要る
eラーニング 費用が安く、学習の質が均一 実践練習がしづらい。続くかどうかが本人次第になりやすい

実際には、一つに絞るより組み合わせるほうがうまくいきます。よくあるのは、講師派遣とオンラインの併用です。出社できない日はオンラインで参加できるようにしておくと、欠席が理由で脱落する人が減ります。

なお、オンラインレッスンやeラーニングの受講には、社員一人ひとりにパソコンが必要になります。まとまった台数を短期間でご用意したい場合は、法人向けパソコンのレンタルを活用することで、購入コストを抑えながら柔軟にご対応いただけます。

eラーニングの弱点である「続くかどうかが本人次第」という点については、私たちなりの答えを持っています。研修の受講者には中国語eラーニング「スマチュ」を無料でお付けしていて、通勤中や昼休みに開けるようにしてあります。レッスンの時間だけで語学が身につくことはないので、その間を埋めるためのものです。あわせて団体管理アカウントをお使いいただくと、管理者の方が受講者ごとの利用状況を確認できます。

社内の会議室で行われる講師派遣の中国語研修
社内の会議室に講師が伺う形。移動時間がかからないぶん、業務との両立がしやすい

5|講師で決まる部分

登山で優秀なガイドが要るのと同じで、語学の習得は講師で大きく変わります。どのルートが安全で最短か、どこにリスクがあるか。それを示すのが講師の役割です。

中国語が話せることと、中国語を教えられることは別です。中国には外国人に中国語を教える「対外漢語」という学問があり、教えるための体系的な知識を学べます。ただ話せるだけの中国人と、この訓練を受けた講師とでは、結果に相当な差が出ます。

ある大手企業では、大学院生の中国人に講師派遣をお願いしていました。費用は抑えられるのですが、2年ごとに卒業や就職で入れ替わります。長期休暇に自分の予定を優先されて研修が飛ぶこともあり、スケジュール調整に余計な手間がかかっていました。

イーチャイナの講師は全員が国際中国語講師資格の保有者です。一級講師はこれに加えて、日本人への指導歴が3年以上ある者が担当します。講師紹介で、実際に担当する講師をご覧いただけます。

イーチャイナアカデミーの中国語講師陣
イーチャイナのプロ講師陣

6|予算を決める。助成金も検討する

語学研修の費用は、講師のレベル、受講形態、回数と期間で決まります。自社にとってどこの優先順位が高いのかを先に決めておくと、比較がしやすくなります。

目安として、社員研修全体の平均は従業員1人あたり年間36,036円です(産労総合研究所「2025年度 教育研修費用の実態調査」2024年度実績)。中国語研修だけでこの金額を使い切ってしまうと、他の研修が組めなくなります。1人あたり1〜2万円に収まるかどうかが、一つの判断材料になると思います。

実際の総額がどのくらいになるかは、3つのモデルケースと比較の5つの軸で、公開単価をもとに試算しました。

あわせて検討していただきたいのが助成金です。中国語研修は、業務との関連が説明できれば人材開発支援助成金の対象になり得ます。中小企業の経費助成率は45%から、事業展開に伴うリスキリングであれば75%。私たち自身も社内の外国人スタッフ向けの日本語研修で助成金を使っているので、申請の実務までお話しできます。詳しくは対象になる研修と、ならない研修にまとめました。

ひとつだけ、早めに知っておいていただきたいことがあります。計画届は訓練開始日の1か月前までに労働局へ提出する必要があります。研修が終わってから申請することはできません。開講したい日の2か月以上前にご相談ください。

7|研修の決め方を、社内で揃える

参加者の募集、研修先の選定、スケジュール調整と、実務は多岐にわたります。その前に語学研修の方針を社内で決めておくと、あとの調整がずいぶん楽になります。方針は大きく3つに分かれます。

  • 成果を優先する:目標レベルと現在地の差から、必要な回数と期間を逆算してプランを組む
  • 予算を優先する:予算内に収まる期間と回数を先に決め、その範囲でできることを最大化する
  • 上限内で自由に:受講できる最大レッスン数だけ決めて、期間内は受講者の裁量に任せる

予算を優先しすぎると、研修そのものが成立しなくなることがあります。ある私立の中高一貫校で、放課後に中国語・フランス語・スペイン語を自由に受けられる講座を開いていました。1年間で60分5回。できればHSK1級を取らせたいというご希望でしたが、HSK1級には通常50時間の学習が必要です。結果として、中国語に興味を持ってもらう程度に終わりました。生徒の自主参加なので回を追うごとに人数が減り、次のレッスンまで1〜2か月空くので前回の内容を忘れてしまう。多言語に触れる機会があるという点は保護者に示せますが、習得には結びつきませんでした。

8|成果をどう確認するか

ある人事のご担当者から「語学研修は砂に水を撒くようなもので、成果が見えにくい」と言われたことがあります。率直な言葉だと思いました。費用と時間をかけた以上、社内には何かを報告しなければなりません。

ここは、研修を始める前に決めておく部分です。出席率、レベルチェックの前後比較、検定の受験結果、受講後のアンケート、業務での使用場面の報告。どれか一つでも数字が出せれば、報告書は書けます。

イーチャイナの場合、受講管理画面をご覧いただけます。講師がレッスンのたびに、その日の進捗と次回までの宿題を入力しています。もともとは受講者向けのものですが、管理者の方もここから研修がどこまで進んでいるかを確認できます。eラーニングの団体管理アカウントとあわせて、ここまでは追加費用なしです。その内容をExcelやWordの資料にまとめてご提出する場合は、提出1回につき2,200円(税込)の有料オプションとなります。

もうひとつ、研修設定側と参加者の間に温度差があること自体は、珍しくありません。担当者からは「これだけ時間と費用を使っているのに」という声が出て、参加者からは「業務が忙しくて学習時間が取れない」という声が出る。本人にやる気があっても、直属の上司の理解がなくて研修日に会議が入る、ということもあります。研修は受講者だけの問題ではない、というのが実感です。目的の共有を1番目に置いたのは、そのためでした。

おわりに

ここまで8つ挙げましたが、そのほとんどは研修が始まる前に決まる部分です。逆に言えば、始める前の打ち合わせに時間をかけるほど、失敗する確率は下がります。

私たちが最初のご相談で、受講者の人数やレベル、実施できる時間帯まで細かくうかがうのは、そのためです。決めきれていない段階でかまいませんので、状況をお聞かせいただければ、どこに無理がありそうかを含めてお話しできると思います。

中国語研修に助成金は使えるのか|対象になる研修と、ならない研修
中国語の法人研修はいくらかかるのか|3つのモデルケースと比較の5つの軸
中国語研修はどこでつまずくのか|よくある6つの失敗と防ぎ方
助成金活用中国語講座について詳しく見る
中国語研修の導入事例を見る
法人向け中国語研修のコース・料金を見る

何から決めればいいか、の段階でご相談ください。

受講予定の人数、現在のレベル、実施できる時間帯。この3点をお聞かせいただければ、到達できる目標と必要な期間、概算の費用をあわせてご提案します。助成金を使う場合の進め方もご説明します。

法人向け中国語研修を見る